大家さんへ ◆ 賃貸住宅経営の「常識」にとらわれすぎていませんか?

2016/04/29

オーダーメイド賃貸住宅

賃貸住宅市場は昨今めまぐるしく変化してきています。

今まではこうだったからこれからもそう。
そういう「当たり前」だったことが「当たり前」ではなくなりつつあります。

変化に対応するためには、これまでの常識を見直していくことも必要かもしれません。

スポンサーリンク

ado

 

貸すために作られた住宅に住んだことがありますか?

heya2

皆さまは賃貸住宅にお住まいになった事はありますか?

2階建てくらいの低層アパートやエレベーター付きの中高層マンション、メゾネット形式のテラスハウス、最近では賃貸専用に建築された一戸建て住宅も流行っていますね。

賃貸住宅として市場に出ている「借りることができる物件」には、大きく分けて2種類あります。

 icon-hand-o-up ひとつは上にもあげているような、「賃貸するために建築された建物」です

多くの場合、遊休地をお持ちの地主さんや資産家さんなどのオーナーさんが自宅とは別に建てられることが多いです。
物件の一部や近隣にオーナーさんがお住まいの場合もありますが、遠隔地にいらっしゃる場合もあります。
大体の場合は、オーナーさんは自分の建てた賃貸用のお部屋にお住まいになった事がありません。

  もうひとつは、「ご実家やご自宅としてお住まいになっていたお部屋」です

自宅として住んでいたけれど転勤などの事情があって住むことができない期間を賃貸として貸し出す場合や、相続や入院など事情があって住む人がいなくなってしまった家を賃貸に出す場合もあります。
いわゆる、分譲賃貸や戸建て賃貸といわれるような物件が該当します。
多くの場合は、自宅として暮らしていた愛着のあるお部屋を貸し出されます。

たのちんでいう「賃貸住宅」は前者を想定しています。

そしてオーナーさんとは、複数戸・複数棟の賃貸用の住宅を所有し、賃貸住宅経営を行っておられる大家さんのことです。

後者のような建物の賃貸住宅市場への流入もこれから増えていくと思いますが、まだまだ数も少なく環境も整っていないのでここではとりあえず考慮しません。

たのちんに訪問くださった皆さまは、賃貸住宅にお住まいになったことがあるでしょうか?

住んでみてどんな感想をお持ちになったでしょうか?

 

賃貸住宅に求めるニーズの多様化

iroiro2

賃貸住宅を探す方々は、いったいどういう条件で部屋探しをされるのでしょう?

 icon-check まず第一に重視するのは「家賃」

月々の固定費をキチンと支払っていけるのかどうかはとても大事ですよね。

  そして「立地」

学校や職場までの距離や交通の便の良し悪しも、気にして探される方が多いですね。

  それから「間取り」

ひとり暮らしならワンルームから1LDKくらいでしょうし、ファミリーでお住まいなら2LDK~のお部屋を探しますよね。

それらの前提条件で絞り込んだうえで、その中からより自分の希望に近い物件を選んで入居を決められます。

基本的にはその3つの条件は今も昔も変わらない三大要素ですが、最近の賃貸住宅へのニーズをみていると、それ以外の要素が占める割合が増えてきている気がします。

 icon-hand-o-up 例えば、セキュリティの条件

防犯面を重要視する声は年々高まり続けています。
オートロックやTVモニター付きインターフォンが、物件探しの必須条件になっている女性は多いです。また、防犯カメラやセンサーライトの設置も喜ばれます。
カギは、ディンプルキーやカードキーを採用する物件も増えてきましたね。もし、ディスクシリンダー錠の場合は交換した方が無難です。

  住宅設備の進歩も目覚ましいです

特に、キッチンやお風呂、洗面所、トイレなどの水回りの設備へ対する入居検討者の要望は高まり続けています。システムキッチンやシングルレバー水栓、追い焚き機能、温水洗浄便座へのニーズは高いです。
逆に、3点ユニットバス、バランス釜のお風呂や和式便器、給湯が瞬間湯沸かし器の1点給湯などの物件はその他の条件面で特筆すべき点がない場合、入居募集にかなり苦戦すると思われます。

  そして昨今の傾向として特筆すべきなのは、生活の利便性や豊かさを求めるニーズが増してきていることです

今や住宅でのインターネット接続は必須ですし、宅配ボックスの需要の急拡大など、暮らし方の変化を感じます。
20㎡以下のワンルームは常識でしたが、今の標準は25㎡にも近づきつつあり広さを求めるニーズは拡大するとともに、収納力の向上も求められています。
ペットと一緒に暮らすという選択をとられる方も多いです。

ほんの一昔前までは「賃貸なんだからこのくらい」で当たり前だったことが、急速に通用しなくなってきているのを肌で感じます。

なぜでしょうか?

 

賃貸市場は需要と供給のバランスが崩れてきている

tenbin

ひとつの客観的な事実は人口の減少です。

しかも少子高齢化の上で人口が減少していますから、高齢者の割合が増え若者が減っています。

賃貸住宅のメインターゲットである若者は減り続けています。

それと反比例して、賃貸住宅は毎年毎年増え続けています。

新築される戸数と同数の古い住戸が解体されれば総数はイコールですが、実際は新築された分積み上がるだけですから、増えます。

借りたいという需要より、貸したいという供給の方が多ければ、当然これまでと同様のやり方では借り手がつかなくなります。価格を下げるか、付加価値を上げるかの施策が必要になります。

賃貸住宅の場合は、まずは家賃の下落から始まりました。

これまでと同様の原状回復リフォームと募集活動をしても入居が決まらなくなりはじめました。

そうすると、入居募集を任せている賃貸仲介業者は「家賃を2000円下げてくれたら入居するという人がいます」といい始めます。事実、当初はそれで決まっていきます。

しかし、それでも決まりにくくなってくると今度は、「TVモニターフォンの設備をつけてほしい」「給湯器を交換してほしい」などという要望になり、「システムキッチンじゃないと決まらない」「間取りの変更を伴うリフォームが必要です」と、徐々に大きな工事を要求してきます。

それらの工事は物件の再生と資産価値の向上も担っていますから、決して無駄な工事ではありません。
大事で必要な投資です。

しかし、それでも決まりにくくなってきているのが昨今の現状です。

 icon-check 家賃はもう目いっぱいできる限り下げています

  そして、できる限りの投資をしてリフォームも行っています

それでも、決まらない物件が出てきています。
このままでは、賃貸住宅経営はままなりません。

どうすればいいのでしょうか?

 

新築と競うリフォームをしても新築には勝てない

shinchiku

ハウスメーカーやアパートメーカーの作る最新の新築賃貸住宅は、パッケージとしてとても完成されています。

一昔前の賃貸住宅では考えられないほど断熱性や遮音性、気密性に優れています。そして、賃貸用の量販品とはいえ必要充分な、システムキッチンやユニットバスなどの住宅設備を整えています。
時代のニーズや流行を取り入れた広さや間取りもよく考えられており、性能面ではとても優れています。

しかし、賃貸住宅経営は事業ですから採算が取れなくては建設の意味がありません。

注文住宅のようにオーダーメイドをしたり、オリジナルのカスタマイズを加えたりすればその分費用がかさみますので、基本的にはそのメーカーのすすめるパッケージプランで建設されることがほとんどです。

量販品でできる限り家賃の取れる設計をしますから、どうしても、プランは似たり寄ったりになります。

春と秋は賃貸住宅の新築シーズンですから、2~3件内見に行ってみてください。
思っている以上に、同じような内装です。

それでも新築であれば、それだけで大きなアドバンテージがあります。

入居者の気持ちになればわかると思いますが、誰でも、どうせ住むなら新品で新しいの部屋の方がいいですよね。しかも、新築時から既存物件と同等程度の家賃で募集に出されることが多くなりました。

少し前までは、新築は周辺相場と比べて家賃が高めでした(新築プレミアムと呼ばれます)。競争力のある新築の内に少しでも投資金額を回収するのと、将来必要になる修繕の費用を賄うためです。

しかし、今はそのような新築価格では新築の入居もままならないケースが出てきており、かなり弱含みで募集賃料を設定されることが増えています(のちのち修繕費で困ると思いますが…)。

そうなると、新築のアドバンテージはさらに膨らみますね。

許容できる程度の家賃差でその他諸条件も同等の「最新設備を整えた新築賃貸住宅」「既存物件のリフォーム部屋」

どちらが選ばれるでしょうか?

 

ステレオタイプな入居者は減っている

choice2

人口が増え、建てれば儲かる入れ食いの成長期を経て賃貸住宅の市場が成熟してきて、

「賃貸住宅とはこういうもの」

というこれまでの常識が通用しなくなってきました。
ステレオタイプの「これまでの常識」はこんな感じでした。

 icon-caret-right 賃貸住宅に暮らす入居者の多くは、若者

  大学への進学や就職などで親元を離れ、ひとり暮らしを始める

  結婚や同棲を考え始め、ふたりで住める部屋を探す

  子どもができて子育ての環境がいい住宅を探し始める

  子どもが小学生に上がる頃マイホームを検討し始める

よくあるパターン、というやつです。

日本人の持ち家信仰は根強く、念願のマイホームを手に入れるための間の賃貸住宅は所詮仮住まい。
「あこがれのマイホーム」を買うまでのつなぎという位置づけです。

長く住む家ではないし、毎日仕事で忙しく帰って寝るだけで、こだわりや住み心地などはあまり考えたことがありません。

こんなモデルケースが「当たり前」でした。

それは実際、なむがそうだったのでよくわかります。

とりあえず実家から出て独り立ちをし、毎日モーレツに働いて帰ってきたらバタンキュー、彼氏と一緒に住みたくて少し広い部屋に引越ししたこともあります。

しかし、ここから少し道を外しましたね…。

 icon-hand-o-up 結婚してない…(人生最大の誤算)

  子どももいない…

  ねこがいる…

「あこがれのマイホーム」を買うタイミングを完全に逃しました。涙
特殊なケースでしょうか?

でもこういう方、地味に増えています。
少しだけデータで見てみます。

戦後の婚姻率・離婚率(-2015年、2015年は概算値)

平均初婚年齢(歳)

*参考:日本の婚姻率・離婚率・初婚年齢の推移をグラフ化してみる(2016年)

 icon-caret-right 結婚適齢期を過ぎても結婚しない、自由きままな30代が増えている

  社会に出て10年を超え、ある程度の良識・経験・実績を積んできて、ある程度の稼ぎもある

  同年代で家庭を持ち幸せに暮らしている人たちをうらやましく思うこともあるけれど、自分一人の自由さを手放す勇気もない

  守るべき家族はいないので、もちろん自分の稼ぎは自分のもの

  いざという時のための蓄えもしているけれど、食事や趣味など自分が価値を感じるものにかけるお金は厭わない

自分のライフスタイル・生き方を求める人たち。
モデルケースに当てはまらないわたしのような生き方をする人間もいます。

もうひとつデータを参照してみます。
親元を離れない若者が増えているというデータです。

(単身世帯、親と同居する若年未婚者の割合の増加)

ー中略ー
これまで結婚を機に親元を離れていた層が未婚化・晩婚化の進展とともに親元にとどまるようになったほか、これまで進学や就職に伴って親元を離れていた層の中でも、経済的な自立が困難という理由により親元に残る者が増えたことから、親と同居を続ける若者も増えている。若者の配偶関係及び親との同居状況を見ると、独身者で親と同居する者の割合は20代、30~34歳、35~39歳のいずれの年齢層でも増加傾向にあり、2010年においては、20代で53.1%と過半数の者が、30~34歳で27.6%と3.6人に1人が、35~39歳で20.1%と5人に1人が親と同居していることが分かる。中でも、35~39歳の年齢層における親との同居率の上昇が著しく、1995年から2010年にかけて割合で見ると10.9%から20.1%へ、人数で見ると85万人から193万人へ増加している(図表80、81、82)。

図表80 20代の配偶関係・親との同居状況
20代の配偶関係・親との同居状況

図表81 30~34歳の配偶関係・親との同居状況
30~34歳の配偶関係・親との同居状況

図表82 35~39歳の配偶関係・親との同居状況
35~39歳の配偶関係・親との同居状況

*参考:住まい方の変化

それでなくても少なくなる一方の若者が、実家からでない…。
ひとり暮らしのニーズもふたり暮らしのニーズも、減っていることになります。
モデルケースになるはずの若者自体が少ない。

 icon-check 新築のアドバンテージを活かして、ステレオタイプな賃貸住宅は供給され続ける

  モデルケースに当てはまる想定される入居ターゲットは減り続ける

こんな状況下で、これまで「当たり前」だった賃貸住宅経営の常識がいつまで通用するでしょうか?
もう、多くのオーナーさんは気づいているのではないでしょうか?

これまでのような管理会社や仲介店の言うとおりの空室対策をしても、抜本的な改善策にはならないかもしれないということを。

 

淘汰されたくなければ知恵を絞るしかない

thinker2

賃貸住宅経営は、建築会社の言うとおりに建てて、管理会社の言うとおりに手入れして、仲介店の言うとおりに募集すれば儲かる商売ではなくなりました

オーナーさんは賃貸住宅経営者として、不足費用を自分のサイフから持ち出しすることを良しとせず「事業」として成り立たせることを考えなくてはなりません。

そうでなければ、先祖代々の土地や子供たちに残す資産を守るつもりで始めた賃貸経営が、資産を目減りさせる負債でしかなくなる可能性もあります。最悪の場合、手放すことにもなりかねません。

 icon-hand-o-up 賃貸住宅は「不動産」です。

その土地・地域に根付いた地場事業で、立地・方角・形態・条件等すべて異なり、クルマなどの工業製品や既製品のように同じ商品はふたつとありません。

だからこそ、A物件で行った施策が必ずB物件で通じるとも言い切れず難しい点が多いことも事実ですが、その分のやりがいも大きい事業であることは間違いありません。

「家」という生活の根幹である賃貸住宅を貸すということは、その人の人生の一部を形成する大事な一時期をお預かりするということです。

オーナーとして、知恵を絞ることは「当たり前のこと」にはならないでしょうか?

 

NEXT

 

-オーダーメイド賃貸住宅
-,