突如くる災害!大家と入居者…8種の保険を活用したリスク回避方法
2016/06/15
賃貸経営にはいろんなリスクやトラブルの種があるなぁ…。といつも思う、たのちん管理人なむ。
所有する賃貸物件になにか事故が起こった場合、大切な資産が毀損するのみならず、入居者や被害を与えた第3者に対して損害賠償責任が生じることがあります。
保険でできる限りのリスクヘッジをしましょう。
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Contents
賃貸経営と災害リスク
東日本大地震に象徴される地震、大型台風や竜巻、ゲリラ豪雨、大雪被害…昨今、このような自然災害が頻発しています。大家さんがどんなに備えをしていても、突如襲ってくる回避できない災害で被害を受けないと言い切ることはできません。
自然災害のみならず、火災や漏水、破損、盗難などの事故や事件にも注意が必要です。
例えば火事が起きた場合、大家さんにまったく責任のない延焼被害を被ったとしても、失火責任法が適用されて火元から賠償を受けることができません。仮に損害賠償を請求できるような場合であっても、放火など加害者が特定できない事件では損害賠償を求める相手すらわかりません。
めったに起きないことではありますが、ひとたび起こってしまうと賃貸経営に壊滅的なダメージを与えるのがこれらの災害リスクです。
そんな状態であったとしても、大家さんは「わたしには非がないんだから知りませんよ!」とは言えません。
物件に住んでいる入居者がいる限り、建物は早急に修繕しなくてはいけません。
突発的な災害に見舞われようとビクともしないキャッシュが手元にあれば別ですが、不測の事態が起こった時に資金繰りに支障が出ないように、火災保険や地震保険など必要な保険に入っておくことは鉄則です。
毎年払う保険料はもちろん経費にできますから、賃貸経営を行う以上必要なリスクヘッジとしてうまく保険を活用しましょう。
大家さんの保険と入居者の保険
でも、保険って少し…というか、かなりややこしいですよね。
ローンを組んだ際に金融機関にすすめられた保険に入ったまま、ほったらかしの方も多いかもしれません。
ローンも終わっているような築古の物件を相続された方は、保険に入っているかどうかも分からないかもしれません。
また、入居者さんが入っている保険も、仲介店さんや管理会社にお任せでどんな保険に入っているかなんて知らないのではないでしょうか?更新の確認なんかもしてないかもしれません。
大家さんが入る保険と、入居者さんが入る保険の区別がよくわからない…、という方もたま~~におられます。
同じ「火災保険」という名前で呼びますからややこしくなっていますが、大家さんが入る「火災保険」と入居者が入る「火災保険」は少し違います。
大家が入っているから入居者はいらないだろう、入居者が入っているから大家はいいだろう、というものではありません。
おおざっぱに説明すると、
大家さんの入っている火災保険は「建物」を対象物にしています。
入居者さんの保険は室内にある「家財」ですね。
例えば、大家さんの物件のお隣の家が火事になって、もらい火で類焼してしまった!なんていうとき、その火事に全く関係がない入居者の入っている保険が適用されるはずないですよね?
「隣家の責任なんだから隣の家に賠償してもらえばいい」と思うかもしれませんが、日本には失火法という法律があって火元に損害賠償請求できない場合が多いです。
大家さんは自ら火災保険に加入して自己防衛する必要があります。
逆の場合もしかりです。
入居者がうっかり失火してしまった際に、部屋を原状回復してもらえなかったら大家さんは困りますし、入居者自身も必要な家具や家電を買い替えたりしなければ生活が立ちゆきません。
キチンと入居者用の火災保険(家財保険・借家人賠償保険など)に入っておいてもらいましょう。
失火法(失火の責任に関する法律)には、以下のような条文があります。
「民法第709条の規定は失火の場合には之を適用せず。但し、失火者に重大なる過失ありたるときは此の限りに在らず」
民法第709条の規定はなにかというと、不法行為による損害賠償の規定です。
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」
ということは、失火法は
「通常だとそのような相手への損害は賠償責任が発生するような事案だけれど、重大な過失がなければ失火だけは損害賠償責任は適用しませんよ」という法律です。
昔からの決まり事ですが、これを見る限りでも自分の身は自分で守らねばならないと感じますね。
大家さんが入った方がいい保険の種類
ある日突然、数千万~億レベルの被害を被るリスクから大切な資産を守るためには、適切な保険に加入しておくことが重要です。
万が一甚大な被害を受けてしまった場合、多額の修繕費が発生する上に入居者が住むことができずに家賃収入はストップします。
ローンが残っていれば返済に支障をきたすことになり、不動産を手放さざるを得ない事態に陥るかもしれません。しかも、売却額が残債に及ばなかったらローンだけが残ってしまうということもあり得ます。
それらのリスクは大家さんひとりではとても抱えきれません。
保険を使ってリスクヘッジしましょう。
1.火災保険
すべての基本ベースになる保険ですね。
専用住宅を対象にした火災保険は、さまざまなリスクを総合的に補償する「住宅総合保険」とベーシックな「住宅火災保険」に大きく分かれます。
「火災」保険と言いますが、火災だけでなく水害や風・雪・雷などの天災、水漏れ・盗難などの事故など幅広く補償される保険です。
*大家さんのための火災保険
*大家さんのための火災保険の選び方
*大家さんの火災保険、こんなときにも使えます
2.地震保険
地震による被害に対処するには「地震保険」への加入が必要です。
地震が原因の火災には火災保険が適用されないため「地震保険」で備える必要があり、単体での契約はできないため、必ず火災保険とセットで加入することになります。
その地域の地震発生危険度の応じて保険料が定められ、地震による火災・倒壊・損壊・埋没・津波被害などが補償されます。
*大家さんのための地震保険
3.施設賠償責任保険
「施設賠償責任保険」とは、大家さんの建物や設備の欠陥や不備が原因で、人にケガを負わせたり物を壊したりしたときに生じる損害賠償責任をカバーするための保険です。
賃貸住宅経営の場合は、給排水管の欠陥による漏水事故で階下に損害を与えた場合や、コンクリートやタイルの欠損による落下事故で他人に損害を与えた場合などが想定されます。
*大家さんのための施設賠償責任保険
4.家賃補償保険
賃貸経営をしている中で起きた予期せぬ事故によって部屋が貸せなくなってしまったとき、大家さんが被る家賃収入の損失に対してかける保険が「家賃補償保険」です。
火事や水災、死亡事故などが起きると多額の修繕費用がかかる上に、募集再開までに期間家賃収入は途絶えるのにローン支払いは続くというトリプルパンチになります。
その際の、家賃収入分を補てんする保険です。
*大家さんのための家賃補償保険
5.家主費用保険(特約)
最近にわかに取りざたされることが増えたのが、この「家主費用保険(または特約)」です。
孤独死保険などと呼ばれることもあります。
賃貸住居内で起こる死亡事故に伴って発生する、空室期間や家賃値引き期間の収入減少の補てん、清掃や消臭、原状回復工事などの費用、遺品整理代などが支払われます。
*大家さんのための家主費用保険
火災保険の保険料は請求しても上がらない
「こんな事故で保険請求したら来年の保険料が上がらないかな…?」
と思ってらっしゃる大家さんが稀にいます。
クルマの保険の印象が強いからですよね。
自動車の保険は等級制度がありますから、自責に応じて保険料が上がる可能性がありますが、火災保険は何度申請しても保険料は上がりません。
ですが、何度も何度も使用していると更新の時に契約の継続を断られることもあるようです。
どの程度がボーダーラインなのかは詳しくないのですが…(知ってる方教えてくださいw)
常識の範囲外に件数が多いとか、こじつけっぽい原因の事故が多かったりした場合でしょうかね…?
また、火事などで「全損」と認定される損害を被ると保険契約自体が終了します。
支払われた保険金で物件の再建が済んだ暁には、再度保険に入り直す必要があるということですね。
入居者さんに入ってもらわなくてはいけない保険
大家さんは建物や付帯する設備に対して火災保険をかけますが、賃貸住宅に住む入居者は部屋の中の家財が保険の対象物になります。
ですから、入居者さんに入ってもらう火災保険は「家財保険」とも呼ばれます。
そして、多くの場合はその「家財保険」を主契約にして、「借家人賠償責任保険」「個人賠償責任保険」の2つの特約をセットした商品構成になっています。
入居者の過失によって大家さんの物件に被害が出たとき、入居者が無保険だったら損害を補償してもらえなくなりますので、キチンと加入しておいてもらいましょう。
1.家財保険
主契約として必ず入ってもらうのが、家財を補償する火災保険「家財保険」です。
自分の家財を自分で守る保険ですから、かけるもかけないも入居者の自由ではあるのですが、多くの場合この家財保険に加入していないと、特約の借家人賠償責任保険や個人賠償責任保険をつけられません。
すると、入居者の過失で大家さんや他の第三者に損害を与えた場合の補償が受けられなくなります。
必ず加入してもらいましょう。
*入居者さんのための火災保険
2.借家人賠償責任保険
大家さんにとって重要なのは、この「借家人賠償責任保険」です。
この保険は、損害を発生させた入居者から損害を受けた大家さんに対しての賠償責任をカバーする保険です。
もし入居者がこの保険に加入していなかったら、大家さんは受けた被害を自分の保険を使うなりして直すことになります。
あとから入居者に損害の求償を行うこともできますが、無保険の入居者から多額の賠償金を回収することはまず難しいでしょう。
3.個人賠償責任保険
合わせて付加しておくべき特約は、この「個人賠償責任保険」ですね。
これは、人にケガをさせたり人のものを壊してしまったりしたときの損害を補償する保険です。
賃貸でよくあるケースは、お風呂などで水漏れを起こしてしまい階下の家財などに被害を与えた、また、ベランダから物を落として下にいた人にケガをさせてしまった、などでしょうか。
個人賠償責任保険は自動車保険などの特約として付帯していることも多いため、2重に加入する必要はありません。
入居者に加入してもらう保険の注意点
多くの場合「家財保険」は、賃貸借契約と合わせて仲介店や管理会社の窓口で申し込みをすることが多いですね。
大体の賃貸仲介業者は少額短期保険業の登録を行っており、代理店として保険の契約受付を行っています。
保険会社によっても違うのかもしれませんが、大体保険料の30%~50%がバックマージンとして代理店に支払われますので、賃貸仲介契約に紐づく売り上げの一部になっています。
入居者向けの家財保険は賃貸の更新時期と合わせた2年契約が一般的です。
2年ピッタリで引越しをする場合や、ワンルームから4LDKに引っ越すなど保険金額が大きく変わる場合などは、新しく入り直したり切り替えたりした方がいいですね。
でも、そうでない場合は引越し前の賃貸住宅でかけた火災保険を新居のものに切り替える手続きをすれば、満了までは追加の保険料を払わず継続することは可能です。
ですが…
そういう案内をわざわざする仲介業者さんはいらっしゃいませんね(当たり前ですが…)。
入居者さんには優しくはないですけど…
管理会社や大家さんはその方が、助かると思います。笑
なぜなら入居から2年で契約更新と同時に保険の更新時期がくる、ということが前提であった方が管理は楽だからです。
入居者マターの保険契約だと、うっかり保険の更新モレなどということが起こりがちで事故が起こってはじめて無保険状態だった、ということに気づくことになります。
契約の更新は基本的に代理店が行うことになっていて、保険会社から入居者に更新時期のお知らせが行くことはないと思います。
賃貸借契約時に保険契約も手続きしてくれた代理店が、その後の更新もキッチリフォローしてくれていれば、更新切れはないと思うのですが…
正直、そこまでしてくれてない??? 気がします。
仲介店は基本的には、仲介が終わったら仕事は終わりですし…
管理会社は、ちゃんとやってるところとやってないところがあると思います…
大家さんは管理を任せている会社に確認をした上で、必要であれば自分でも更新時期のチェックをしておいた方がいいかもしれません。
リスクNo.10 事故や事件の発生リスク