最終手段…。家賃滞納に伴う3つの退去パターンについて知ろう
2016/06/15
滞納が原因で裁判まで行うことになり、判決を得るところまで見てきました。
せっかく縁あってご入居いただいた入居者ですが、大家さんも商売ですからタダで住み続けてもらうことはできません。
家賃の滞納が解消されなければ、残念ですが退去をしていただくほかありません。
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家賃滞納が原因の退去方法は3パターン
滞納がかさんでもう住み続けていただくことが困難になってしまったら、一日でも早く退去していただいて次の入居者の募集をすることを優先しなくてはなりませんね。
退去の方法は以下の3つに区分できると思います。
2.明け渡しの強制執行 3.夜逃げ |
時間的にも費用的にも、いちばんダメージが小さく済むのは1番ですね。
できるだけ自ら部屋を片付けて退去してほしいです。
任意退去してもらえなかったら2番の強制執行をすることになってしまいますが、こうなるとまた1ヶ月半~2ヶ月の時間と数十万の費用がかかります。
最悪なのが3番ですねw
裁判も済んでいて明け渡しの判決も出ている段階ならいいですが、まだ何の判決も出ていない状況だと面倒です。
どうせいないんだから勝手に片付けておわりにしちゃいたい衝動に駆られると思いますが、グッと耐えて時間とカネのかかる手続きを踏んでいかなくてはなりません。
任意退去 ~ できるだけ自らすみやかに退去してもらおう
滞納がかさんできたら「ムカつく!」「裁判!」「回収!」となるかもしれませんが、その感情はなんとか抑えて、できるだけ早いタイミングで任意退去をすすめていきましょう。
家賃が払えないということはその物件に住めるだけの経済力がないということですから、もう少し身の丈に合った部屋に引っ越すなり、実家に戻るようにすすめてみてはどうでしょうか。
あくまでも最初は入居者の身の上を尊重して「提案」する、という立場がいいのではないかな…。
親身になって考えてくれる大家さんに対して「悪いな」「未払い分の家賃払わなきゃ」「引越し先探さなきゃ」と思ってもらった方が円滑ですし、最終的には得な気がします。
余裕があれば、管理会社や仲介店と協力して、近隣の物件探しをサポートしてあげてもいいかもしれません。
滞納家賃の回収は退去をしたあとでもできます(難易度はかなり高まりますし、大家さんの根性次第な点もありますが…)ので、退去を優先して一刻も早く賃貸経営自体を健全化する判断も大事かもしれません。
まだ少しでも余裕がある時期の方が転居もしやすいですし、お互いの関係が拗れだすとなかなかうまく事が進まなくなることもあります。
ケースバイケースですので一概にも言えませんが…。
連帯保証人に連絡がつくのなら、協力を仰ぐのも有効です。
大家さんは所詮他人ですけど、連帯保証人は近しい人だったりお世話になっているという意識がありますので、迷惑かけたくないという意識が働きやすいものです(おかしいですけどw)。
うまく話がついて退去日が決まったら、口約束だけではなくて合意書など書面に落とし込んでおきましょう。
法的な拘束力があるわけではありませんが「言った、言ってない」の水掛け論や、「忘れてた」などの言い訳防止には有効です。
滞納家賃や原状回復費用の回収
任意退去してもらったからといって、滞納家賃や原状回復費用をあきらめる必要はありません。
退去後だろうとなんだろうと踏み倒させずに回収すればいいんです。
しかし現実は、大家さんがあきらめて終わるケースがほとんどな気がします。
退去後も「毎月○日に○万円ずつ支払う」と約束したとします。
決められた日に決められた額をキチンと振込みしてきてくれる元入居者であればいいのですが、途中で止まったり、はじめっから振込してこなかったりしたら、引越し先まで回収に行かなくてはいけません。
ちゃんと約束を守れる人なら、滞納で退去になることなんてそもそもないですしね…。
こうなる可能性は十分あります。
管理会社もさすがにそこまで面倒みてくれないことの方が多いです。
だってあくまで、請け負っているのは入居者の管理ですからね…。
退去した元入居者の債権回収まで管理業務に入っていないです。非弁行為に当たる可能性もあって難しいです。
そうなると、大家さんは自力でやらなくちゃいけません。こっから先は根性です。笑
または、もう回収はあきらめるからその代りに早く退去してほしい、という場合もありますよね。
弁護士などに相談しても「家賃はあきらめて次を考えましょう」と言われるかもしれません。
そういう場合はさっさと忘れて次に取り掛かるしかありませんが…。
あきらめるしかないんでしょうか…?
なむは連帯保証人にある程度の資力があれば、回収できる可能性もなくはないと思っています。
退去はもう終わっていますので、明け渡しの裁判をする必要がありません。
これは大きいです。
「少額訴訟」や「支払督促」などの簡易な法的手段を使って、大家さんが自分で回収を図ることは可能ではないでしょうか。
任意退去と立ち退き料
ネットかテレビか忘れましたが、どこかで家賃滞納者へ立ち退き料を払って出て行ってもらう。みたいな話を聞いたことがあります。
さすがに笑いました。
あり得ません。
あり得ません(2回目w)。
善意の入居者に対して、こちら(大家さん)の都合で退去をお願いするわけではないんですよ?家賃を払わない悪質な債務不履行者に対して契約の解除と物件の明け渡しを求めているんです。
なんでさらにお金あげるのwww
盗人に追い銭もいいところじゃないですか…。
実務的にどうとか、その方が早く片付くなんていう問題じゃないんです。もし業者がそんなこと言うんであれば怠慢ですよ。もしそれで自分はうまくいって見事追い出しに成功したとしても、その滞納者はそのお金で引っ越した先でまた同じことしますよ。味しめてw
不良入居者のさばらせて、大家さんは同業者同士つぶし合いですね…。笑えません…。
寝言は寝て言えです。
さっさと明け渡しの訴状書いて強制退去です。
引越し代渡して退去させた方が安上がりかもしれませんが…。
どうにもかわいそうだったら、役所の福祉相談窓口教えてあげてください。
明け渡しの強制執行 ~ 退去のための最終手段
任意で退去をしてもらうことが困難な場合は、強制的に退去していただくほかありません。
強制的に退去という言葉面すごく悪いですねw
勝手に荷物運び出して処分したり、カギつけかえたりといった強制力ではないです。
こんな「自力救済」では違法ですから、大家さんがお縄になってしまいます。
もう皆さんお分かりだとは思いますが、ちゃんと裁判をして判決を得て、法的根拠をもって明け渡しの強制執行をする、ということですね。
何度も書いている気がするので耳タコでうざいかもしれませんが、明け渡しの判決が出たからといって裁判所が勝手に追い出し作業をしてくれるわけではありません。
判決を元に「明け渡しの強制執行」を行う申立てをして初めて、裁判所は動いてくれます。
強制執行は裁判所の執行官が行ってくれますが、1度で追い出しを完了してくれるわけではありません。
申立てをしてから1ヶ月半から2ヶ月ほどの期間と2度の訪問を経て、やっと部屋の明け渡しが完了します。
その際にかかる費用はすべて大家さんが出す必要があります。
強制執行だけならそこまで高額ではないのですが、荷物の運び出しのために手配される作業員(引越し屋さん)の人件費や保管場所の費用が高くつくことが多いようです。
このように、退去を最後の最後まで粘られると、結構な時間とお金がかかります。
ですから、なんとか自分で退去してもらえるように働きかけるわけです。
もう少し、詳しく解説します。
1.強制執行の申立て
建物明け渡しの強制執行の申立ては、その物件を管轄する地方裁判所に行います。
申立ての際に、65,000円の予納金が必要です(裁判所によって異なるらしいので、詳細は所在地の地方裁判所にお尋ねください)。
執行官の手数料、立会費用、交通費、郵便代等に使われるもので、実際に執行された後、余りがあれば返してもらえます。
申立てには、
・物件目録、当事者目録等の添付書類 ・判決や和解調書などの執行力のある債務名義正本 ・債務名義正本の送達証明書 ・執行場所の案内図 ・委任状などその他必要書類 ・印鑑 ・予納金 |
などが必要なようです。
その他、強制執行のサポートを弁護士や司法書士などの専門家に委託すれば、その費用もかかります。
2.執行官との面接
強制執行の申立てをした翌日以降、担当の執行官と面接があります。
この面接で、執行場所や入居者の状況などを確認し「催告期日」や「断行期日」などを決めます。
荷物の搬出や保管をする業者やカギを開錠する業者などの手配についても打ち合わせます。
3.執行官による催告
強制執行は2段階に分けて行われます。
まずは「催告」です。
大家さんと執行官、委託していれば弁護士や司法書士、そして、執行補助者(カギ屋や運搬業者、保管業者)などのメンツで部屋を訪問します。
執行官が、実際にその場所に相手方になる入居者がいるかどうかを確認します。
在宅であれば本人に確認しますし、不在でも郵便物などで確認できます。事前に催告日を知らせないので不在の場合も多いです。
もし不在の場合でも執行官は強制的に室内に入る権限を持っていますので、カギを開けて室内に入ります。
カギを勝手に変えてたりするとカギ屋さんの出番です。
この時同時に、運搬業者が荷物の量を調べて、運び出し費用の見積もりをします。
その間に執行官は、強制執行の断行日を記載した「催告書」を室内の目立つところに貼りつけていきます。
催告書の内容は以下のようなものです。
・第三者に又貸しするなどの占有移転を禁止すること ・もし占有を移転したとしても、新たな占有者に対して強制執行を行うこと ・明け渡しの断行日 ・入居者に引き渡せなかった動産について売却し処分することがあること |
ここまでくると「見てない、受け取ってない」などという言い訳は通用しません。
期日までに明け渡しが行われなければ、断行日に強制的に排出されるのみですので、あきらめて退去してくれる場合が多いようです。
裁判所から執行官がきて、勝手に入って貼り紙をペタペタ貼っていかれると、さすがに心が折れるみたいです。ここから断行日までは少なくとも1ヶ月はありますから、その間に自分で片付けて退去してくれれば助かります。
慣れている大家さんは「強制退去を断行されると、またすごく費用がかかるよ。いらない荷物は処分してあげるから、とりあえず退去しなよ」といって、残置物の処分は大家さんに任せると書かれた退去届にサインさせるようです(実際の費用は大家さんが負担なんですけれど)。
断行になるとここからさらに搬出代と保管費用が数十万円かかりますから、身ひとつでも任意退去の方が大家さんは得なんですよね。
まさしくプロですw
しかし、家がなくなったらこれからどうしていくのか路頭に迷うような場合もきっとありますよね…?
追い出して終了、後のことはどうなっても知らん!とできない場合は、どうしたらいいんでしょうね。
なむはすみません、そこまでの知見がなくて(>_<)
断行の期日は延ばす?ことも可能?という話も聞きました。
福祉事務所に連れて行ってあげて生活保護の受給申請をすることくらいはできるんでしょうかね。
生活保護受給者の受け入れを積極的に行っておられる大家さんもいますからね。
話がまとまれば断行は回避できるかもしれません。
4.執行官による明け渡しの強制執行の実行(断行)
催告のときに定められた期間を過ぎても明渡しが行われない場合、強制的に部屋の明け渡しの作業が行われます。
これが「断行」ですね。
具体的には、大家さん、執行官、執行補助者で断行日に部屋へ行き、入居者がいようがいまいが泣こうがわめこうが、部屋の中にあるものをすべて運び出してカギを変えます。
まさしく強制的に明け渡すわけですね。こわい…(>_<)w
(実際はほぼ不在みたいです)
部屋をからっぽにする作業をするわけですが、入居者は通常の引越しのように荷物を段ボールに詰めて運び出しやすくしてくれているわけではありません。
住んでいるそのままです。
ふとんも敷きっぱなしですし、ゴミ屋敷の場合もあります。
それをまとめながらになりますし、あくまで他人の所有物ですからあまり粗雑に扱うこともできませんから、作業は大変です。
そして執行官は次の執行予定がある場合もありますから、のんびり作業をしている暇はありません(実際に作業を行うのは執行補助者である運搬業者さんです)。
ある程度の人数の作業員を投入して一気に片付けてしまうケースが多いようです。
運び出した荷物は、執行補助者(保管業者)の倉庫などに保管されますが、その保管費用も大家さんの負担です。
場合によっては、強制執行部屋以外の空き部屋を保管場所にすることもできますので、そうなると運搬代と倉庫代が少し節約できますね。
部屋が片付いたら最後にカギを交換して、明け渡しの強制執行【断行】は終了です。
これらの荷物の運びだし、運搬、保管、カギ交換などを行う「執行補助者」に支払う費用は、ワンルームなどの単身部屋でも20万~程度、ファミリー物件だと50~60万はかかると言われます。
結構高いですね~…。
普通の引越しの4~5倍高いイメージです。
ですから残置物処分代くらいかかっても、できるだけ断行前に自ら任意退去をしてほしいということなんですね。
5.明け渡しの強制執行の完了
強制執行によって運び出された荷物は、倉庫(または空き部屋)に2~4週間程度保管されて、その間に所有者が引き取りにきたら返すことになっています。
引き取りに来なかった場合は競売にかけられて売却されますが、そんな他人の生活用品(ゴミ含む)を買う人はいませんし、落札されなければ保管され続けて保管費用がかかり続けますので、普通は大家さんが引き取って処分することになります。
遺留品の処分が終わると、本当に明け渡しの強制執行が完了します。
強制執行にかかった費用を支払って、預けた予納金に余りがあれば返してもらって、清算が完了です。
本当に大変ですね…。
6.未払いの賃料等の回収
明け渡しが完了したからといって金銭債務が消え去るわけではありませんから、未払いの分の家賃や裁判にかかった費用、強制執行にかかった費用などの請求を続けることは可能です。
が。
う~ん…。
回収の見込みはほぼないと思っていいでしょうね…。
悔しいですが、ないものはない。のが現実です。
夜逃げ ~ それでも自力救済はできません
自ら退去をしてくれる任意退去、自分では出て行かずに強制的に退去させることになる強制退去、と退去の2パターンを見てきましたが、ここまでは入居者いましたよねw
なんとか話をする余地もありましたが、最後は最悪です。
3つめの退去パターンは何にも言わずにトンズラ、「夜逃げ」です。
夜逃げのいちばん困るところは、もういないのでどうやっても意思の疎通を取りようがないという点です。
次の入居者を募集するためには、必ず裁判をして明け渡しの判決を得て、強制執行をして残置物処分までしなくてはなりません。
入居者が居さえすれば、なんとか話して「自ら出て行った」ということにできますからね。「出て行く」という意思表示をせずに居なくなるのがいちばん困ります。
夜逃げしてもいいけど「もう出ていきます。残した荷物は大家さんの好きにしていいです」と、一筆残していけ!!!と思うと思います。
いちばん時間もお金もかかる最悪のパターンです。
手続き的には、通常訴訟→確定判決→強制執行→明渡しとこれまで見た流れを取るしかないですね。
一部違うのが、部屋にいないので内容証明郵便が届かないこと。
仕方がないので、裁判所の掲示板に通達内容を掲示して伝えたことにする「公示送達」という手続きを踏みます。
これにも時間がかかるんですよね。
2週間掲示してはじめて「伝わった」とみなされるので、いちいち時間がかかります。
夜逃げ防止のためになにかできることってありますかね?
夜逃げされるほど督促で追い込まない、とか?
入居のしおりに夜逃げする前にご相談くださいと書く、とか?
夜逃げの原因が家賃だけならまだしも、だいたいの場合が他のヤバメな借金のような気がします(>_<)あわわw
…難しいです。
そして、いざそうなると自力救済したくなりますよね。きっと…。
もうどうせ帰ってこないのでだまって全部捨てちまおう。と思いますよね。
たぶん、なむもその立場になったらそう思う(と思う)。
でも、もしそうやって自力救済をして、万が一入居者が戻ってきたら…。
負けるのは大家さんになってしまいます。
理不尽ですが仕方がないです。
*参考:不動産賃貸借における無断立入り・鍵交換に関する判例の動向
家賃滞納のリスクと退去
新しいステージやステップのための退去であれば、大家さんとしても巣立っていく入居者さんへ感謝や送別の気持ちも湧くというものですが…。
滞納の伴う明け渡しとなると、イヤな仕事です。
しかし事業として賃貸経営をしている以上、こういう仕事もないとは言えません。
やりたくはない仕事ですがリスクをリスクと認識して、有事の際に対処できるような知識を持っておくことは大事なことなのかもしれません。